定義
国際収支とは、一定期間に一国の居住者と外国の非居住者との間で行われたすべての経済取引をまとめた記録のことです。モノを売り買いする貿易だけでなく、海外旅行の費用、海外株式への投資、貸したお金の利子など、国境を越えて行き交ったあらゆる外貨の流れが網羅されています。
国境を越えて行き交うお金の出納帳
私たちが毎月給料を受け取り、生活費を使って家計簿をつけるように、国も外国とお金をやり取りした記録を残しています。例えば、国内の企業が外国に自動車や半導体を売って外貨を稼げば、受け取ったお金(輸出)として記録されます。反対に、外国産の原油や海外のブランド品を買うために外貨を支払えば、出ていったお金(輸入)として記されます。
この取引は、単にモノを売り買いすることにとどまりません。海外旅行先で使った宿泊費や、外国企業へ投資して得た配当金、海外に留学している子どもの学費まで、すべてが含まれます。このように外国とやり取りしたすべてのお金の流れを漏れなくまとめた帳簿が、まさに国際収支なのです。
一定期間に貿易や旅行といった日常的な取引で稼いだ外貨が、出ていった外貨より多ければ「経常収支の黒字」、逆に出ていったお金のほうが多ければ「経常収支の赤字」と呼びます。ニュースで耳にする「国際収支の黒字・赤字」という言葉も、一般的にはこの経常収支のことを指しています。
最も重要な2つのポケット:経常収支と金融収支
国際収支の帳簿は、性質の異なるいくつかの「ポケット(項目)」に分かれています。その中でもニュースや新聞で最も頻繁に取り上げられる中核が、「経常収支」と「金融収支(韓国などでは金融勘定とも呼ばれます)」です。
経常収支は、モノやサービスを売買したり所得をやり取りしたりする日常的な取引で、受け取ったお金と支払ったお金の差額です。モノを輸出入した実績(貿易収支)、海外旅行や貨物輸送(サービス収支)、海外投資によって得られた配当や利子(第一次所得収支)、対価を伴わない送金や無償援助(第二次所得収支)がここに含まれます。汗を流して稼いだ「本業の給料」のようなものなので、国の基礎的な経済力を測るバロメーターとして使われます。
一方の金融収支は、資産の移動や投資資金を扱います。外国人が自国の株式を買ったり、国内の投資家が米国株を買ったり、あるいは海外から資金を借り入れたりする際のお金の動きを記録します。銀行口座の預金やローンのように、資産の形が変わる取引を記録するポケットです。
少し掘り下げて:黒字なら無条件で良いこと?
国際収支の黒字は無条件に良いことで、赤字は絶対に危険だと思われがちです。もちろん、経常収支の黒字が安定して続いていれば外貨が潤沢になり、通貨危機の防波堤になってくれます。しかし、過度な黒字が長く続くと、貿易相手国との間で摩擦が生じて通商圧力を受ける恐れがあります。また、国内へ外貨が大量に流入することで自国通貨高が進み、輸出企業の価格競争力が落ちてしまうこともあります。
さらに、会計帳簿のルール(複式簿記)上、すべての取引の出納を合わせると、国際収支の全体の合計は原理的に必ずゼロになります。1つの取引について、お金が入った側(貸方)と出た側(借方)の双方に同額が記録されるためです。例えば、半導体を輸出すると貿易収支に輸出として記されると同時に、受け取った代金の分だけ対外資産が増えたとして金融収支に記されます。そのため、経常収支が黒字であれば、原則としてその分だけ対外純資産が増えたこと(外貨準備の増加を含む海外資産の増加、または対外負債の減少)として金融収支に記録されます。実際の統計には、資本移転等収支や、統計上のズレを調整する誤差脱漏も含まれます。
結局のところ大切なのは、単なる数字のプラスやマイナスそのものではありません。輸出で稼いだお金が未来に向けた健全な投資へと循環しているか、国の借金が危険な水準まで膨らんでいないかなど、その内訳と資金の流れを見極めることなのです。
よくある誤解
国際収支と貿易収支はまったく同じ意味である。
貿易収支は目に見えるモノ(商品)の輸出入の差額だけを計算したもので、国際収支は旅行や物流サービス、配当金、海外投資までを含むはるかに広い概念です。
日常で出会う場面
半導体を米国へ輸出すると、貿易収支の輸出(受取)として記録されます。
海外旅行先でクレジットカードを使ってホテルの宿泊費を支払うと、サービス収支の支払いに記録されます。
米国企業の株式に投資してドルで配当金を受け取ると、第一次所得収支の受取として記録されます。
つまり ひとことで
国際収支とは、一国が外国との間でやり取りしたすべてのお金の流れをまとめた「国家の家計簿」です。