定義
関税を引き上げることなく、外国製品の輸入を難しくするさまざまな措置のことです。輸入できる数量をあらかじめ制限したり、複雑な検査や書類の提出を求めたりする方法が含まれます。税率の一覧表には表れませんが、実際には外国からの輸入を食い止める効果を持っています。
参加費の代わりにルールを増やすと
学校の文化祭で、クラスごとにもぎ店を出す場面を想像してみてください。自分のクラスの焼きそばを一番売りたいと思うあまり、隣のクラスのお店にお客さんが行かないようにする方法を考え始めたとします。
一番わかりやすいのは、隣のクラスに高い参加費を払わせることです。値段を高くせざるを得なくなれば、お客さんは減るでしょう。国と国との貿易において、この参加費にあたるのが「関税」です。
しかし、参加費を急に引き上げれば、相手のクラスはすぐに猛抗議します。誰の目にも不公平だと明らかだからです。そこで、参加費は据え置いたまま、別の道を探ることになります。
「材料の仕入れ表を指定の書式で提出すること」「厳しい衛生検査をクリアすること」「1日に販売できる皿数は限定すること」など、細かい決まりを次々に設けるのです。一見すると公平なルールに見えますが、準備に手間がかかる側だけが引っかかる仕掛けになっています。
実際の国際貿易ではどんな姿をしている?
文化祭のもぎ店のルールは、実際の国際貿易でも同じような姿で現れます。もっとも単純なのは、あらかじめ輸入数量の上限を決めておく方法(輸入割当)です。1年間に国内に入れられる量を固定してしまえば、それ以上は入ってこられません。
製品の表示や成分に関する基準もよく使われます。パッケージに記載する文言や文字の大きさまで細かく指定されると、外国のメーカーはその国専用のパッケージをわざわざ作らなければなりません。余計なコストがかかるため、輸出そのものを諦める企業も出てきます。
書類審査や現物検査も大きなハードルです。港での通関手続きが長引けば、生鮮食品などは売り物にならなくなってしまいます。税金を1円も上げることなく、時間と書類によって参入のハードルを押し上げる方法です。
こうした措置は、関税よりも目立ちにくいのが特徴です。関税率の表を見るだけでは、門戸が広く開かれているように見えるからです。世界的に関税が引き下げられてきたことで、貿易交渉や国家間の対立において、こうした見えない壁が持つ重要性はますます高まっています。
少し正確に掘り下げると
とは言え、すべての規制やルールが「障壁」というわけではありません。文化祭の衛生検査だって、本来はお客さんの安全を守るために必要なルールです。国が定める安全基準や環境基準も、基本的には国民の生活を守るために作られています。
そのため、正当な規制か障壁かの分かれ目は「目的」と「程度」にあります。自国の製品にも同じ基準を適用しているか、目的に対して規制内容が過剰に厳しすぎないか、といった点が問われます。この一線を越えてしまったときに、保護を装った参入障壁だと批判されるのです。
ただし、この境界線を一国だけで決めるのは簡単ではありません。そのため各国は、世界貿易機関(WTO)などの国際機関に自国の規制措置をあらかじめ報告し、紛争が起きたときは第三者の場で話し合います。判断が下りるまでに長い年月がかかったり、明確な結論が出ないまま膠着状態に陥ったりすることも少なくありません。
結局のところ、文化祭のルールと同じです。ルールそのものは欠かせないものですが、そのルールが「特定の相手だけを締め出すために使われている」と見なされたとき、それは「障壁」と呼ばれるようになります。
よくある誤解
非関税障壁とは、法律で輸入を全面的に禁止する措置だけを指す。
輸入を完全に禁止しなくても非関税障壁に含まれます。検査項目や提出書類を過剰に増やし、時間とコストを膨らませて輸入を阻む方法も立派な非関税障壁です。
安全や環境を守るための規制は、すべて非関税障壁である。
規制が存在すること自体が障壁になるわけではありません。自国の品物と外国の品物で異なる基準を使い分けたり、目的に対して過度に厳格すぎたりする場合に初めて障壁と見なされます。
日常で出会う場面
輸入車にだけその国独自の安全試験を義務づけ、国内で販売できるようになるまでに何カ月も余計に時間がかかるようにするケースです。
輸入農産物の検査項目を過度に増やし、港に留め置かれている間に鮮度が落ちて売り物にならなくしてしまうケースです。
つまり ひとことで
関税率を操作する代わりに、規制や複雑な手続きを設けることで外国製品の参入ハードルを高くするさまざまな措置のことです。