定義
原材料の収穫や調達から商品がお客さんの手に届くまで、長くつながる一連の流れ全体をひとつとして管理することです。どこでどれだけ作り、どこにどれだけ保管し、いつ出荷するかを一緒に決めます。1社だけが頑張るのではなく、列に並ぶすべての企業が同じ計画を見て足並みをそろえるのがポイントです。
今日のお昼のカレーはどこからやってきたのでしょうか
給食でカレーが出る日のことを想像してみてください。ジャガイモやニンジンは畑で収穫され、市場を通ってトラックに積まれ、朝のうちに給食室の前に届きます。そして調理スタッフの手を経て、時間通りに配膳されます。
この列のどこかひとつでも遅れれば、給食の時間はそのままずれ込んでしまいます。トラックが渋滞に巻き込まれれば材料の到着が遅れ、材料が遅れれば調理が遅れ、調理が遅れれば給食の時間に間に合いません。
だから給食室は、今日何人が食べるのかを前もって数え、その人数に合わせて何日も前に食材を注文します。食べる量をあらかじめ逆算して注文のタイミングを決めること、これがサプライチェーン管理の出発点です。
ひとつの場所が詰まると、列全体が止まってしまいます
もし給食室に一度にカレーを煮込める大鍋が2つしかなかったらどうなるでしょうか。畑にどれだけたっぷりジャガイモがあっても、給食は大鍋2つで作れるスピードでしか完成しません。このように、列の中で処理能力がもっとも低く、全体のスピードを決めてしまう場所を「ボトルネック」と呼びます。ボトルの首が狭いと、中にいくら水があっても少しずつしか出てこないのと同じです。
では、トラックの故障などで急に列が途切れるのを防ぐにはどうすればよいでしょうか。材料を山ほどためておけば解決するでしょうか。倉庫にためておく材料を「在庫」と呼びますが、在庫を抱えることにも代償があります。ジャガイモからは芽が出て傷んでしまいますし、倉庫のスペース代や冷蔵庫の電気代もかかり続けます。
反対に在庫を減らしすぎると、トラックが1日遅れただけで給食が出せなくなります。そのため担当者は、トラブルに耐えられる最低限だけを蓄え、それ以上は増やさないという絶妙なバランスを探ります。この綱渡りこそが、サプライチェーン管理でもっとも腕の見せどころとなる仕事です。
給食室でも同じ工夫をしています。お米や缶詰のように日持ちする食材は何日分かストックしておきますが、ジャガイモやニンジンのような生鮮食品はその日の朝に受け取ってその日のうちに使い切ります。その代わり、納品が遅れた場合に備えて別の業者を手配したり、代替メニューを決めておいたりするのです。
もう少し詳しく言うと:モノよりも「情報」が先に流れます
給食の流れをもう一度見てみると、実は2つのものが流れています。ジャガイモは畑からお皿側へ流れますが、「今日何人が食べるか」という情報は、お皿から畑側へとさかのぼっていきます。モノが前へ進む一方で、情報は逆方向に流れているのです。
この情報が遅れたり膨らんだりして伝わると、列全体が大きく揺さぶられます。給食室が念のために多めに注文し、市場がさらに余裕を持たせて発注し、畑がそれを見て余計に苗を植えると、一番後ろには余ったジャガイモが山のように積み上がってしまいます。実際に食べる人数は変わっていないのに、です。
そのため現在では、列に並ぶ企業同士が同じ数字を同じタイミングで共有することを目指しています。ただし、短くて速い列だけが常に正解とは限りません。一番安い1社だけに頼り切っていると、そこで事故や災害が起きたときに代わりのルートがなくなってしまうからです。
よくある誤解
サプライチェーン管理とは、モノを倉庫にたっぷりためておくことだ。
在庫をためすぎると保管スペースや費用がかかり、傷んでしまうこともあります。トラブルを乗り切れる最低限だけを保ち、無駄を削ぎ落とすバランスを見つける仕事です。
自社の倉庫と配送さえうまく回していれば、サプライチェーン管理は完璧だ。
列に並ぶ前後の企業が止まってしまえば、自社の商品も止まります。だからこそ、原材料を調達する先から運送業者まで、関係者全体で足並みをそろえて計画を立てます。
日常で出会う場面
夜にネット通販で注文した商品が翌朝届くのは、注文が集まる量をあらかじめ予測して、近くの配送拠点に前もって商品を運んでおいたからです。
コーヒー豆が不作だったり輸送船が遅れたりすると豆の仕入れ価格が上がり、やがて街のカフェのメニュー価格にも影響が及びます。
つまり ひとことで
原材料の調達からお客さんの手元までの一連の列をひとつとして捉え、作る量・保管する量・出荷するタイミングを関係者全員で足並みをそろえて管理することです。