定義
対価や労力を払わず、他人が用意した恩恵だけをタダで受け取ろうとする人が増えることで、社会に本当に必要な施設やサービスが十分に供給されなくなってしまう現象です。
グループワークから始まる悲劇
学校のグループワークで、何日も徹夜して資料を集めたり発表の準備をしたりする人がいる一方で、連絡もまともに返さず、最後に名前だけちゃっかり載せるメンバーがいます。その人は時間も労力もかけていないのに、一生懸命がんばった仲間のおかげで同じように良い成績をもらえてしまいます。
経済学では、このように正当な対価や労力を払わずに利益だけを手に入れる行為を、運賃を払わずにバスや電車に乗ることにたとえて「フリーライド(タダ乗り)」と呼びます。
問題は、これが単に「ちょっとずるい人がいる」という話では終わらない点です。真面目にやった人だけが損をしてバカを見るという空気が広がると、次は誰も進んで課題をやろうとしなくなります。その結果、全員の参加意欲が落ちてしまい、最終的にはみんなで成し遂げるべき仕事そのものが成り立たなくなってしまうのです。
もう少し正確に言うと:タダ利用を防げないから起こる
もう少し経済学的に正確に言うと、フリーライダー問題はパンやスマートフォンのように、お店でお金を払って買う一般的な商品ではほとんど起きません。お金を払わない客には商品を渡さなければ済むからです。
しかし、夜道を照らす街灯や国を守る国防のような「公共財」は性質がまったく異なります。自分が街灯の設置費用を1円も出していなくても、夜道を歩くときに街灯の光が自分だけを避けて照らさない、ということはできません。経済学ではこれを、お金を払わない人の利用を排除できない「非排除性」と呼びます。
お金を払わなくても他人が用意した恩恵を同じようにタダで受け取れるなら、わざわざ進んで財布を開く人はいなくなってしまいます。誰もが「誰か他の人がお金を出してくれないかな」と様子見をするようになり、結局は街灯が必要な場所に十分に立たない、という結末を迎えてしまうのです。
社会がフリーライドを解決する方法
全員がタダ乗りばかりを狙って様子をうかがっていたら、生活に欠かせない国防や警察、街灯といった公共サービスは十分に提供されません。このように、市場の自由に任せていてはうまく機能しない状態を「市場の失敗」と呼びます。
そこで国や共同体は、特別な強制手段を使います。その代表的な解決策が「法律」と「税金」です。政府は法律に基づいてすべての市民から公平に税金を徴収し、そのお金で道路を整備したり治安を維持したりします。利用を制限できないのなら、代わりに強制的なルールと徴税によって費用を全員で分担させ、フリーライドを大きく抑え込むわけです。
学校のグループワークでタダ乗りを防ぐために、先生が貢献度シートを提出させたり個別の小テストを実施したりするのも同じ発想の解決策です。税金は「利用を防げないから費用を強制的に割り振る」方法であり、貢献度評価は「貢献した分しか評価を与えないことでタダ乗りそのものを封じる」方法と言えます。明確なルールと正当な評価の仕組みがあってこそ、正直者が損をすることなく社会やチームが円滑に回っていくのです。
よくある誤解
フリーライダー問題は、怠け者や意地悪な人が多いせいで起きる現象だ。
個人の道徳心の問題というよりは、お金を払わなくても恩恵を排除できない「公共財」の性質から生じる、経済構造的な現象です。
日常で出会う場面
誰もが国防の恩恵を受けられますが、自主的な寄付だけに頼っていては国を守るための十分な資金は集まりません。
マンションの住人たちが共有部分の掃除に進んで参加せず、誰か他の人がやってくれるのを待っているような状況です。
つまり ひとことで
対価を払わなくても恩恵を制限できないとき、誰もがタダ乗りを狙うことで、社会に必要な公共サービスが不足してしまう現象です。