累進税率

所得という背丈が伸びるほど、上の段の負担割合が付け足されていく階段のような仕組みです。

定義 累進税率(累進課税)とは、税金を計算する基準額(課税標準)が大きくなるほど、より高い税率を適用する税金の計算方式です。所得が多い人ほど所得全体から多くの割合を税金として納めるように設計されており、格差を縮めて所得の再分配を行う役割を持っています。

なぜ所得が増えると税金の割合も上がるの?

月に10万円を稼ぐ人にとって、1万円の税金は食費を削らなければならないほど重い負担です。一方で、月に100万円を稼ぐ人にとっての10万円は、惜しくはあっても日々の食事に困るほどの打撃ではありません。同じ「10%の税金」であっても、それぞれが感じる重みは全く違います。

そのため国は、所得が少ない人には低い税率を、所得が多い人には高い税率を適用します。これを経済学では能力に応じて負担するという「応能負担の原則」と呼びます。経済的なゆとりが大きい人ほど、社会のためにより大きな役割を分担できると考えるのです。

こうして多く集められた税金は、支援を必要とする人々のための社会保障や、道路・病院といった公共インフラの整備に使われます。自然と豊かな層からそうでない層へと富が循環し、社会全体の所得再分配の効果を生み出します。

もし全員に同じ割合で一律に課税すれば、所得の格差は時間の経過とともに広がるばかりです。累進税率は、社会のバランスを保ち、みんなで支え合って暮らすためのセーフティネットなのです。

所得区間に応じ税負担が増す累進税率図 1000万W 6% 15 1億W 35 所得再分配効果

課税ラインを超えると手取りが減る?

昇給や給与交渉の時期になると、「税率のランク(税率区分)が上がると、かえって手取りが減って損をする」という話を耳にすることがあります。例えば年収500万円までは15%、それを超えると24%の税率になる場合、年収が501万円に上がると501万円全体に24%がかかって手取りが減ってしまう、と勘違いしてしまうのです。

しかし、実際の累進課税は所得を段々畑やタンクのように分けて計算します。500万円までは以前と同じ15%の税率が適用され、基準を超えたオーバーした1万円にだけ24%の税率がかかる仕組みになっています。

すでに通過した下の区分の所得には、これまで通り低い税率がそのまま適用されます。したがって、税率のランクが一段階上がったからといって、過去の枠の収入にまで高い税率がさかのぼって課されることは絶対にありません。

つまり年収が上がれば、増えた分の一部を多く納税するだけで、手元に残る最終的な手取り額は必ず増えるのです。税金のランクアップを理由に、昇進やボーナスを怖がる必要はまったくありません。

もう少し正確に言うと:限界税率と実効税率

税法の一覧表に書かれている数%から45%といった税率を、経済学では「限界税率」と呼びます。これは稼いだ全所得にかかる税率ではなく、所得の一番てっぺんにある最後の1円にかかる税率を指します。

一方で、稼いだ総所得の中で実際に納めた税金の本当の割合は「実効税率」と呼びます。低い税率が適用された下の区分の所得がベースにあるため、実効税率は表に見える限界税率よりも必ず大幅に低くなります。

さらに、扶養控除や医療費控除、生命保険料控除などの各種控除も適用されます。そのため、限界税率の区分が24%の人であっても、実際に納めている税額は所得全体の10%前後に収まるケースがほとんどです。

累進課税を正しく理解するには、複雑な税率表の数字だけを見て怖がるのではなく、自身の実際の税負担割合である「実効税率」を把握することが大切です。

🤔 よくある誤解

✕ 誤解

税率区分が一段階上がると所得全体に高い税率がかかり、手取りが以前より減ってしまう。

✓ 事実

新しい税率は基準ラインを「超えた金額」にのみ適用されます。前の区分の所得は低い税率のまま計算されるため、収入が増えたのに税金のせいで手取りが減るということはありません。

🧺 日常で出会う場面

1 所得税:一定の金額を超えるごとに税率が段階的に高くなるよう設定されています。
2 電気料金の累進制:電力使用量が多くなるほど、段階的に単価が高くなる料金体系も似た仕組みです。
💡 つまり ひとことで

累進税率とは、所得が増えるほど超えた部分により高い税率をかけ、格差を是正する階段式の税金制度です。