定義
あるサービスや製品を利用する人の数が増えれば増えるほど、その製品自体の利便性や価値が雪だるま式に膨らんでいく現象のことです。製品自体の機能や品質がまったく変わらなくても、「利用者が増えた」というただそれだけの理由で、すべての利用者が得られるメリットや満足感が大きくなります。
1人ではガラクタでも、みんなが使えば必需品になる
電話が世界にたった1台しかなかったと想像してみてください。電話をかける相手もいなければ受ける人もいないため、その電話はただ埃をかぶる置物にすぎません。
しかし、もう1人が電話を手に入れた瞬間、2人の間に1本のつながりが生まれます。利用者が4人に増えればつながりは6本に増え、10人になればなんと45本へと跳ね上がります。新しく参加する人が1人増えるたびに既存の利用者全員につながる相手が1人ずつ増え、ネットワーク全体のつながりの総数は爆発的に増加していくのです。
私たちが毎日使っているLINEやInstagramのようなSNSも同じです。アプリに特別な新機能が突然追加されなくても、「周りの友達や家族がみんなそこに集まっている」という事実だけで、そのアプリの価値はかけがえのないほど大きくなります。
つながりの数がこのように急速に増える点に着目し、ネットワークの価値は参加者数の2乗に比例するという経験則を「メトカーフの法則」と呼びます。ただし、すべてのつながりが同じ価値を持つわけではないため、実際にはこれよりも緩やかに増えるという指摘もあります。
もう少し正確に言うと:直接効果と間接効果
経済学では、ネットワーク効果を大きく「直接的ネットワーク効果」と「間接的ネットワーク効果」の2つに分けて説明します。
1つ目の直接的ネットワーク効果は、同じ役割を持つ利用者同士が直接つながるケースです。電話やメッセージアプリのように、使う人が増えるほど会話や情報のやり取りができる相手がダイレクトに広がる状況を指します。
2つ目の間接的ネットワーク効果は、異なる2つのグループがお互いを引き寄せ合うことで生まれます。フードデリバリーアプリやスマートフォンのアプリストアが代表的な例です。料理を注文する利用者が増えれば、より多くの飲食店が出店し、魅力的な飲食店が増えれば、さらに新しい注文者が集まります。
このように、異なる2つのグループが連鎖的に成長する好循環を生み出すことで、プラットフォーム全体の価値が雪だるま式に急速に膨らんでいくのです。
トップ企業が市場を独占しやすい理由
ネットワーク効果が働く市場では、初期にある一定の基準点、つまり臨界点(クリティカル・マス)を超えた瞬間に、爆発的なスピードで成長が加速します。すでに多くの人が集まっているという事実そのものが、新たな利用者を惹きつける最も強力な武器になるからです。
このように巨大化した市場では、後からより優れた技術や魅力的なデザインを引っさげて新規参入した企業が現れても、王者を打ち負かすのは極めて困難です。すでに友人たちと交わしたトーク履歴や写真、人間関係をすべて捨てて、自分一人だけで別のサービスへ乗り換えるには、利用者が負担すべき「移行コスト(乗り換え費用)」があまりにも大きすぎるためです。
結果として、利用者を最も多く集めたトップ企業1社が市場の大部分を独占する「勝者総取り(ウィナー・テイク・オール)」の現象が起きやすくなります。ただし、先行した者が常に勝つとは限りません。利用者をいち早く多く集めた側が有利になるだけであり、人々が複数のアプリを併用する市場では独占が起きにくいこともあります。
現代の数多くのIT・プラットフォーム企業が、創業初期に莫大な赤字を覚悟してまで無料サービスを提供し、大々的な割引クーポンを配って利用者をかき集める理由も、まさにここにあるのです。
よくある誤解
技術や品質が最も優れているサービスが、常に市場で勝利する。
技術面で多少劣っていたとしても、すでに圧倒的な利用者数を獲得してネットワーク効果を享受しているサービスが、後発のより優れたサービスを退けるケースは少なくありません。
日常で出会う場面
LINEに新しい機能が追加されなくても、友人や家族が全員使っているため、他のメッセージアプリへ乗り換えられません。
フリマアプリに出品者が増えることで買い手が集まり、買い手が増えることで再び出品者が増えていきます。
つまり ひとことで
利用者が増えるほど価値が高まり、その高まった価値がさらに新たな利用者を呼び込む強力な力のことです。