定義
卵を1つのカゴに盛るのではなく複数のカゴに分けて入れるように、手元の資金をさまざまな投資先に分散して託す投資の基本原則です。ある1か所で損失が出ても他の資産まで共倒れにならないようにし、資産全体が受ける衝撃やリスクを抑えて安定した運用を続けるための手法です。
なぜ卵をいくつかのカゴに分けるのでしょうか?
ピクニックに行くとき、10個の卵を全部ひとつのカゴに入れたところを想像してみてください。歩いていて小石につまずいて転んだら、カゴの中の卵が一気に全部割れてしまい、お昼ご飯が食べられなくなってしまいます。ですが、3つのカゴに分けて入れておけば、1つを落として割ってしまっても、残りのカゴの卵でしっかり食事をとることができます。
資産を運用するプロセスもこれとまったく同じです。どんなに盤石に見える企業であっても、予期せぬ工場の火災や経営陣の判断ミスなどによって、価値が大きく暴落することがあります。たった1つの企業にすべての資金をつぎ込むのは、1つのカゴにすべての卵を載せるようなものです。
さまざまな会社や多様な産業分野にお金を分けておけば、特定の企業が経営難に陥っても、資産全体が致命的な打撃を受けることはありません。このように個別企業が抱える突発的なリスクを下げることが、分散投資の最も基本的な出発点です。
分散投資は一攫千金を狙う技術ではなく、致命的な大失敗を避けるための知恵です。市場の予期せぬ揺らぎの中でも、長く生き残り続ける力を与えてくれるからです。
同じ値動きをしない組み合わせを見つける
単に銘柄の数だけを増やせば、真の分散ができるわけではありません。スマートフォン部品の会社10社に分けて投資したとしても、スマートフォン市場全体が冷え込めば、10社すべての価値が一緒に落ちてしまうからです。
雨が降れば傘がよく売れ、日差しが照りつける日にはサングラスがよく売れます。傘とサングラスの両方を売るお店は、天候による1日の売上の浮き沈みがぐっと小さくなります。投資でも、互いに同じ動きをしない資産を組み合わせるほど分散効果が高まります。傘とサングラスのように正反対の動きをするペアは、その効果が最も大きくなる典型例です。
一般に株式市場が大きく揺れるときは、国が返済を保証している国債やゴールド(金)といった安全資産に関心が集まります。株式と債券を併せ持っておけば、多くの場合、株価が下がっても債券価格が下支えして全体のショックを和らげてくれます。これこそが互いに異なる値動きをする資産の組み合わせが発揮する強みです。ただし、2022年のようにインフレと利上げが急速に進む時期には、株式と債券が同時に下落することもあります。
効果的な分散を行うためには、それぞれの資産の性質を丁寧に見極める必要があります。値動きの似ていない資産を適切に組み合わせるほど、頼もしいポートフォリオ(資産の組み合わせ)が出来上がります。
もう少し詳しく:すべてのリスクを消せるわけではない
もう少し正確に言うと、経済の世界には分散で避けられるリスクと、避けられないリスクが存在します。特定企業の業績悪化や製品の欠陥といった問題は、投資先を分けることで影響を抑えることができます。
しかし、世界的な経済危機や大規模なパンデミックのように、市場全体を揺るがすショックを完全に避けることは困難です。どれほどカゴを分けていても、大地そのものが割れるような大地震が起きれば、すべてのカゴが一緒に揺れてしまうのと同じです。これを市場リスク(システマティック・リスク)と呼びます。反対に、特定企業のトラブルのように分散で減らせるリスクは個別リスク(アンシステマティック・リスク)といいます。
したがって、分散投資はあらゆる損失を完全にゼロにしたり、無条件の利益を約束したりする魔法の道具ではありません。市場の巨大なうねりそのものを、個人が完全にコントロールすることはできないからです。
それでも分散投資は、激しい荒波が押し寄せたときに船が簡単に転覆しないよう重心を保つ錨(いかり)の役割を果たします。取り返しのつかない壊滅的な損失を防ぎ、長期的に資産のバランスを守り抜くための、基本的かつ重要な盾なのです。
よくある誤解
銘柄の数さえ何十個にも増やせば、完璧な分散投資になる。
同じ業種の株ばかり何銘柄も買っても、業界全体に危機が訪れれば一斉に値下がりするため、分散効果は低くなります。業種や国、さらには株式・債券・コモディティ(商品)といった資産クラスまで広げ、互いに異なる値動きをする資産を組み合わせるほど分散効果は高まります。
日常で出会う場面
株式と安全性の高い国債に分けて投資し、株式市場が暴落したときの資産全体へのショックを和らげるケースが一般的です。
自国の資産だけでなく、海外の資産や米ドルなどの外貨にも分散して保有し、特定国の経済ショックに備えます。
つまり ひとことで
性質の異なる複数の資産に分けて投資することで、ある資産が値下がりしても資産全体への打撃を抑えるリスク管理の基本原則です。